作曲家、福嶋頼秀は作曲・編曲、TVや舞台等の音楽制作、レクチャー、コンサートの企画構成等幅広く活動中

宅録♪オススメの機材⑥…エフェクター、ヒント&オーケストラ

2020.08.11

昨日は、【宅録♪オススメの機材⑤…エフェクターは、コントローラーで作業効率アップ!】の記事を公開しました。
今回の話はその内容に関連しての応用編ですので、2日続きで公開させていただきます!
エフェクターなどについてお詳しくない方は、ぜひ前回の記事も読んでみて下さいね。

ちなみに、今までの記事は、次でお読みいただけますので、こちらもぜひ。

 ・こちら … 「宅録♪オススメの機材① 〜ヘッドフォン&アンプ編」
 ・こちら … 「宅録♪オススメの機材②(特別編) 〜USBコンデンサーマイクでお手軽に高音質を♪」
 ・こちら … 「宅録♪オススメの機材③ 〜コンデンサーマイク編(XLR端子)」
 ・こちら … 「宅録♪オススメの機材④ 〜オーディオインターフェイス&プロは!編」
 ・こちら … 「宅録♪オススメの機材⑤ 〜エフェクターは、コントローラーで作業効率アップ!」

ということで今回は、前回のお話の延長として、エフェクターの使い方の具体的なヒントを書きたいと思います。
また、オーケストレーションとも関連する話も出てきます。テーマは 題して・・・

「宅録♪オススメの機材⑥…エフェクター、ヒント&オーケストラ♪」

です。それではさっそく、本題に入りましょう!
 

【ヒント①ピアノ音源+コンプレッサー】
私は、Kawaiのステージピアノという種類のキーボードを使っています。
鍵盤のタッチがとても自然で、ピアノの音色などもとてもリアルで、気に入っています。

ピアノについてはパソコンだけで使えるソフト音源も、定番のもの(IvoryやPianoteq、等)をいくつか持っています。
こういったソフト音源はとても便利で、DAWソフトでmidiデータを作ることで、見事にリアルな演奏を再現してくれます。

ですが私は、音源制作でピアノ等の音を使う時、そういったソフト音源ではなく、キーボードの音を使う事も良くあります。
その場合、エフェクターのコンプレッサーを使うと、響きが豊かな印象になります・・・「目の前で弾いている」といった感じでしょうか。
もちろん、生のピアノをレコーディングした音にも、効果があります。

私は、FMRというメーカーのRNC1773Eを使っていますが、わずかに軽くかけるだけで◎です。
(ピアノのソフト音源に、プラグイン・ソフトのコンプレッサーを組み合わせても、同様の効果が期待できます)

Super Niceモードというボタンがあるのですが・・・、
ピアノ系の音ではOn/打楽器系の音などではOffにすると、効果的です!

【ヒント②オーケストラ系のミキシングの基本】

オーケストラのミキシングの基本は、「ホールの客席で聴く様な、豊かな残響を伴った自然なサウンド」・・・オーケストラのサウンドと言えばコレです!

具体的には例えば、キャパシティー2000人ほどの響きの良いコンサートホールのS席(=客席1階のセンターですね)では、まさにこういった音でオーケストラが聞こえます。

今はEpic系を始め、オーケストラ系の音楽を制作する人も増えてきましたね。そういう人にとっても、このサウンドは基本のキです。

では、そのミキシング方法は?
・・・実はそんなに工夫をしなくても、ホールで豊かに響くオーケストラのサウンドを再現できます。

生のオーケストラをレコーディングした場合であれば、マイクの位置が適切なら、何もしなくても十分なのです。
もし録音した音に残響が少なかったら、オーケストラ全体の音に、なるべく自然な響きのリバーブを足せばOKです。

ソフト音源のオーケストラの場合は、さらに簡単です。
と言うのも、今のオーケストラ系楽器のソフト音源は、楽器一つ一つの音が、ホールの的確な位置のマイク・ポジションで、残響音も含めて録音されているのです。

ですので、同じメーカーの同じシリーズのソフト音源をそろえてさえおけば、響きの整ったバランスの良いサウンドになるのです。
私が幾つか所有している中では・・・例えばEastWest社のQLSOのシリーズは、1つ1つの楽器の音のリアリティーと、残響とのバランスが心地良いと思います。

 

【ミキシングとオーケストレーション】

ただ特に、新しい曲目の場合、ミキシングなどが良ければでオーケストラらしく聞こえるかというと、そうでもありません。

オーケストラらしく聞こえるかどうかのカギは・・・
やはりオーケストレーション(=各楽器のフレーズの書き方、その組み合わせ方)に掛かってきます。
これは、もちろん理論書などで学ぶ必要があり、また実践を経験してブラッシュアップさせてゆくのですが、併せてとても大事なことがあります。

何より参考になるのは・・・生のフル・オーケストラをコンサート会場で聴くこと。
そしてオススメは、プロのオーケストラの定期演奏会に1年間通う、ことです。

こういったことをやっている人とそうでない人とでは、その人が作ったオーケストラのサウンドが、明らかに違います。
作曲・編曲をする方もミキシングをする方も、やった方が絶対にイイです。

国内には、例えば東京だけでも10ほどの常設のオーケストラがあり、どちらのオーケストラも年に6回から10回ほどのシリーズで、定期演奏会を開催しています。
1回の演奏会で3曲聴けるとすると、10回のシリーズに通うと30曲聴けるわけですが、これに通うメリットは次の3点です!

. ①様々な編成の、オーケストラ・サウンドを聴ける。(2管編成/3管編成/弦楽合奏/協奏曲・・・)
  ②様々な時代の、楽曲スタイルを聴ける。(バロック/古典/ロマン派/近現代・・・)
  ③同じオケでも、指揮者や奏者の組み合わせの違いでサウンドが変わる事がわかる。

私も地元の群馬交響楽団や、都内のさまざまなオーケストラの定期会員になって、オーケストラを生で聴きまくりました。オペラもたくさん観ました。
今までに、プロのオーケストラの楽譜を、アレンジを中心に1000曲以上書かせていただいていますが、その基本になっているのは、その時に聴いた音楽です。

←【ヒント③】のサウンドのイメージと、基本となる【ヒント②】→

【ヒント③オーケストラ系のミキシングの応用】
迫力のフル・オーケストラのサウンドは、ヒント②のやり方で、再現できます。
ただ、TVのテーマ曲やBGM、アレンジものなどで、音楽の特徴をストレートに聴かせたい場合は、その限りではありません。

豊かな残響を伴ったサウンドは、楽器の混ざり具合も良くて心地よいのですが、反面、メリハリが乏しくなる傾向もあるのです。
となると別の考え方は・・・?

オーケストラは、様々な楽器が同時に音を出す訳ですが、「それぞれの楽器の音が、手前や奥から、また左右から、言わば立体的に聞こえてくるイメージ」のサウンドもまた魅力的、なのです。

私はリハーサルなどの時に、指揮者のすぐ後ろでオーケストラを聴く機会が多いのですが、そこでは、まさにそういったイメージのサウンドが聞こえてきます。
また時々、フル・オーケストラの指揮をさせて頂く事もあるのですが、指揮台の上もそれに近いサウンドで、それぞれの楽器の音が各所から立体的に聞こえてきます。

(ホールでのリハーサルの場合、実際には楽器の残響は一つに混ざり合って聞こえます。
ですが〝イメージ〟として、楽器の音に加えてその残響も、手前や奥、左右の各所から、立体的に聞こえてくる印象となるのです)

これがオーケストラのサウンドを作る、もう一つの考え方です。
そういったミキシングを目指す時、私は複数のリバーブを組み合わせています・・・
  ・高音楽器の残響は長め、低音楽器は短く、中音域はその中間。
  ・ソロ楽器のリバーブは明るめに、等々。

楽器によっては、残響の聞こえてくる方向も楽器の方向に合わせます。
特に、ヴァイオリン/トランペット/ホルンの3種類の楽器は、リバーブを工夫すると曲の印象が効果的に変えられます。

(と言ってもやり過ぎは禁物。「パッと聴くと自然な響きだけれど、よく聴くとそれぞれの楽器の音が立体的に聞こえる」という程度)
 

【ヒント④ノイズ対策など】
多数の機材を組み合わせるときは、ノイズが多くならない様に注意することも、大事なポイントです。
ミキシングをする音楽のジャンルにもよりますが、ここで印象が変わってしまうことも、時々あります。

ケーブルの選択次第でノイズが減りますし、それでも気になる場合はイコライザーでノイズをとります。
またデジタル・ケーブルで接続する機器がある場合、「同期を取る」ことでノイズが激減し、音がクリアーになったりします。
(興味のある方は「ワードクロック」などの言葉で、検索してみてくださいね。)
 

・・・と今回も、少し専門的な話になってしまいました。
今回の内容は、録音やミキシングを何度かやる様になってくると、きっと参考になると思います。
また、ヒント③のオーケストラの話は、また別の機会に、音の例なども交えて説明したいと思っています。

長文をお読み頂き、ありがとうございました!ではまた次回。

動画は … こちら 、 楽譜は … こちら↓